ヒアルロン酸を注射すると癌になる!?
そんなセンセーショナルなニュースがこの5月にかけめぐりました。
「安易な注入にリスク」という見出しでニュースになった元の情報は、東京大学の病因・病理学専攻 微生物学分野の研究室が発表したものです。
ヒアルロン酸を注射すると癌になる、という短絡的な話ではなく、この発表のメイン部分は「予後不良の乳がんにヒアルロン酸が深く関与する」というもの。
ニュースの見出しをぱっと見ただけだと、恐怖に襲われてしまいますが……
▼こんな風に書いている専門家がいらっしゃるので、まずは慌て過ぎず!
私たちの研究室でも「がん」と「ヒアルロン酸」の関係について研究していますが、ヒアルロン酸は発がんに関与している可能性があるという最新の報告です。ただ、人において実際にヒアルロン酸の体内注入やサプリががんを引き起こす(進行させる)というデータはありません。https://t.co/Xd9gpV86M4
— 佐藤典宏@外科医+がん研究者 (@norip1sato) 2019年5月10日
元の記事を読むと
がんを抑制するというHippo経路を、高分子のヒアルロン酸は活性化する、低分子のヒアルロン酸は不活性化してしまうという話となります。
ジキルとハイドのように同じヒアルロン酸でもHippo経路に対する関与の仕方が変わる、と書いていますね。
(Hippo経路については こちらを参考にしてみるとよいかも。)
こう読んでいくと、癌になっている部分にとって低分子ヒアルロン酸は確かによろしくなさそうな感はあります。
でも促進するという事実もない、と。
ヒアルロン酸がどこまでこのHippo経路に左右をするのか、がこれから問われる部分でしょうけれども、ある特定のタイプの癌のある場所にヒアルロン酸を打ち続けるというのでもない限りは現時点ではなんとも言えない、さほどの問題はおきそうにない、そう感じました。
世界的なレベルでヒアルロン酸注入を行っている人は非常に多い。
これは明らかな事実です。
一部の皮膚がんではHippo経路との関連が強いというのが確認されているのですが、ヒアルロン酸を注入した部分にこの種の癌が関連して多発しているという明らかな報告などもあるわけではないので、今後のさまざまな発表、見解が待たれるところです。
不安な要素もありますがほんとに今後の展開次第。
2014年の発表では同じような話で「ヒアルロン酸は癌を抑える」、と抑える方向だけだったので
(参考 https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/3/50_249/_pdf/-char/ja )
またどのような展開を見せるのか、です!