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東京大学入学式祝辞から考える、男女差別ということ。

平成最後の今年4月12日、武道館で東京大学の入学式が挙行されました。
今年度の新入学生は3,100人。
これは、センター試験を受ける受験生全体の僅か0.006%未満です。

この熾烈な戦いを勝ち抜いた勝者たちに贈られたのは、祝福の言葉ではなく、激励の言葉と問題提議でした。

 

東京大学の入学式で読み上げられた来賓祝辞は、SNSで話題になり、ニュースでも取り上げられました。
上野千鶴子氏の祝辞は、東大入学生だけでなく、30・40代の働く女性の心に刺さり、また、社会に出た諸先輩に深く響くものだったのです。

上野千鶴子氏の祝辞を改めて振り返ってみましょう。

 

ぐっと踏み込んだ、日本が抱える「性差別問題」。

昨年、東京医科歯科大学の不正入試問題が発覚し、女子学生が合格点に到達しているにも拘わらず、不合格にされていたことが明るみになりました。
上野千鶴子氏は、まずこの問題に触れました。

あなたは、社会に出ればこそ男女不平等を感じることはあれ、受験という公平性が求められる公の場で、堂々と性差別が横行していたな想像したこともなかったのではないでしょうか。
テストでいい点を取れば合格できる。提出する紙切れに、性別フィルターが掛けられていることが、想像できたでしょうか。

この問題に触れたうえで、上野千鶴子氏は東京大学にも性差別が存在していると述べました。
また、上野千鶴子氏はこうも発言しています。

―女子は子どものときから「かわいい」ことを期待されます。ところで「かわいい」とはどんな価値でしょうか?愛される、選ばれる、守ってもらえる価値には、相手を絶対におびやかさないという保証が含まれています。

なぜ東大の女子学生が学歴を隠すのか、という問題に言及した際の発言です。

この価値観は、果たして男性だけが植え付け定着させたものでしょうか。
この価値観は、女性自らが「そうであること」を求めた結果でもあるのではないでしょうか。
女性の生存戦略、と言ってもいいかもしれません。
生物学的にも、男性に比べて女性は弱者であり、守ってもらう存在です。
だから、可愛くあろうとする女性はたくさんいます。愛される為ですから、何一つ悪ではありません。
しかし、こうした一般大衆の価値観が、社会進出を目指した女性たちの足を引っ張る結果にも繋がってしまったのではないでしょうか。

上野千鶴子氏はこうも言っています。

―女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。

「弱者が弱者のままで」という言葉の通り、女性である私たちは「弱さ」を認めなければいけません。
例えば、妊娠出産でどうしても仕事にブランクが生れることもそうでしょうし、生理で心身ともにバランスが崩れがちなこと、単純に体力がないことなどでしょう。

現在の日本では、残念ながら最高学府の東京大学や一流企業にすら性差別が横行しています。
私たち女性は、それらの「弱さ」を認めた上で、義務を果たし権利を主張する必要があるのかもしれません。

 

この世界は「不条理」で溢れている。

上野千鶴子氏の祝辞は、決して自身が研究する女性学に焦点を当て、フェミニズムについてのみ言及したわけではありません。

上野千鶴子氏氏の祝辞はこう続きます。

―あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。

そして、これまで「頑張れば報われる」と思えてきたのは、自分の努力の結果ではなく、周りの環境のおかげである、と続きます。

東京大学を目指し、数年間(長い人なら小学校受験から戦いが始まった人もいるでしょう)努力を続けてきた若者にとって、なんという後味の悪い祝辞でしょうか。
彼らはみな、誰よりも努力してきたという自負があるはずです。

そんな彼らに、上野千鶴子氏が最後に贈った言葉はこうでした。

―あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。

この言葉は、果たして東京大学の学生にのみ贈られるべき言葉でしょうか。

現代社会で生きていくことは大変なことです。
ついつい自分のことで精いっぱいになりがちで、自らの力で手にした富は占有しがちで、
この手の届く範囲だけ大切にしようとすることさえ難しいものです。

東京大学の学生でなくとも、誰しもがほんの少し恵まれた環境や能力があるはずです。

自分が豊かになる為だけでなく、少しでもこの社会に分けることができれば、この社会だけでなく、私たち自身の人生も豊かになるはずです。

 

18歳へ贈られた言葉は、不条理を知る大人に刺さる。

上野千鶴子氏の祝辞全文は、下記リンクから読むことができます。

素晴らしい祝辞ですので、ぜひ一度読んでみてください。

選ばれた学生に贈られた言葉が、東大生という枠を越え、現代社会で生きる全ての人の心に何かしらの変革をもたらしたとき、日本は性差別問題克服への一歩を踏み出せるのかもしれません。

 

平成31年度東京大学学部入学式 祝辞

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